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【ライヴレポート】TAKESHI LAB ’15/11/6@代官山「山羊に、聞く?」

ファンも待ち望んでいた、中塚武の斬新かつ画期的、音の企みが実現した。

11月6日金曜の夜、会場となったのは代官山の「山羊に、聞く?」。
自身のHPで無料配信中の『音の実験室=TAKESHI  LAB』が、ついにライヴ化された。

これまでのワンマンライヴでは、ホーン隊を絡めたアグレッシブなステージが主流。それだけに、この大胆な試みは、挑戦する本人はもちろん、観客にとってもワクワク、ドキドキの”実験室訪問”となる。

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店内中央には、ドンと存在感を放つ大きなツリーと趣のある書棚を配したステージが。この不思議な空間も、客席とステージの近さも、今回の“室内楽”ライヴには最も相応しい。

ましてや弦楽カルテット、ウッドベース、パーカッションとの競演とあれば、中塚ワールドの新境地を開く瞬間を、至近距離で体感できる絶好のチャンス。
それだけに、スタートを待つオーディエンスの表情はいつも以上に輝いている。

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いよいよ、各々楽器を携えたメンバーがステージへとあがる。

リズムセクションを担当する寺尾陽介(wood bass)、松岡”matzz”高廣(perc)、弦楽カルテットMole & Musica の4人、宮澤さやか(1st violin)、小松美穂(2nd violin)、増田直子(viola)、松浦健太郎(cello)が舞台に揃う。
そして弦楽器特有のチューニングの音が鳴り響くなか、中塚が登場。その瞬間、“すごく面白いことが始まりそう!”という期待を込めた笑顔と拍手が、客席じゅうから沸き起こる。

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1曲目は「トキノキセキ」。深く静かに弦が奏でるイントロ部分が印象的だ。
中塚の甘く切ない声が、早くもその場をじんわりと包みこむ。
「Johnny Murphy」では、ウッドベースの重厚な音とともに、哀愁漂う中塚の歌声と弦楽器の緊張感ある響きが交差。夢中になって聞き入るオーディエンスは、もはやステージに釘付けだ。

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ここで今日の実験的ライヴの趣旨を語るべく、中塚のMCが入る。
この日のために全曲アレンジし直したという中塚。客席との近さのせいか、終始リラックスした雰囲気のなか、笑いを盛ったトークが炸裂。

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流麗なメロディが美しい「Melody Fair」では、絶妙なタイム感のパーカッションがグルーヴを生み出し、より表情豊かに盛り上げていく。
見れば聴衆は身体を揺らし、どっぷりと音に浸っている。

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TAKESHI LABで無料配信されたナンバー「ふれる」では、弦楽器ならではのピチカートで始まり、中塚のピアノとメロウな歌ですっかり魅了。
ウィンドチャイムの涼やかな音が加わり、流れるような美しい音色が客席を隅々まで満たしていく。

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音の虜となり恍惚としている観客を前に、メンバー紹介でひと息。
各メンバー出会いのきっかけやキャラクターなど、様々な爆笑エピソードを散りばめて話す中塚自身も楽しそう。まさに信頼し合える仲間との共演だからこそ見せられるひとコマだ。

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スペシャル感満載の贅沢な1ST ステージ後半は、無料配信からの1曲で、中塚自身の思い入れも強い「あの日、あのとき」。
そして圧巻だったのは「Cheese Cellar」だ。ルーパーを駆使し重厚な”ひとりハーモニー”を紡ぐと、たちまち会場じゅうから手拍子が沸き起こり、体温も熱気も急上昇だ。

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幾重にも重ねられたリズムとハーモニー、巧みにリズムを刻むパーカッション、胸の奥にまで響くベース、そのどれもが鳥肌モノで、グルーブも抜群だ。
スピード感溢れる弦の音に身をゆだね、最高の盛り上がりをみせるオーディエンス。興奮冷めやらぬなか、大音量の拍手で前半ステージが終了した。

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すっかり熱気を帯びた会場内。30分のブレイクタイムでは、冷えたグラスに注がれたビールやグラスワインを片手に、誰もが濃厚なライヴの余韻に酔いしれている。
さらに、「山羊に、聞く?」シェフが特別に考案した「TAKESHI LABスペシャルプレート」も大人気。
パクチーの香りが食欲を煽るトマトチキンスープ、ボリューム満点のメキシカンタコライス、デザートはガトーショコラという豪華な盛り合わせに、みな嬉しそうに舌鼓を打っている。

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お腹も満たされたところで2stステージに。
おもむろにステージに上がった中塚は、自身の素顔を見せるようなピアノソロ弾き語りで「冷たい情熱」を披露。
待ち望まれたピアノ弾き語りがついに!!これも新しい中塚ワールドの重要な一面。その瞬間を逃すまいと、夢中で聞き入る観客の眼差しは熱く真剣だ。

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さらには、なんとウッドベースとのデュオで「虹を見たかい」へと続く。
重厚なベースと伸びやかな中塚の歌声。ステージに響くたった2音の音がからみ合い、心地よく冴え渡る極上の仕上がり。

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再び、弦楽カルテットとパーカッションがステージに登場。
チューニング音が醸し出す独特の世界、これがピリッと会場を引き締める。

とはいえ、中塚の面白トークが絶えない今回のライヴでは、演奏の合間は爆笑の連続。
そんなハイテンションのなか、「律動」ではキレのある弦楽四重奏の音が、そして「涙に濡れた夢のかけら」ではピアノと胸にギュッとくるボーカルが、オーディエンスの心をガッツリと掴んで離さない。

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鳴りやまぬ拍手のなか、間髪入れず、いよいよラストの「Make Her Mine」に突入! 客席から沸き起こる手拍子で今夜いちばんの盛り上がりを見せる。
息のあった演奏、スピード感、表現力豊かな弦楽四重奏、すべてが一体となり、これまでにない華やかなフィーナーレを飾った。

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観客からの熱烈なアンコールには、「キミの笑顔」で応えるメンバー達。
美しいメロディの運び、それに寄り添うピアノと弦楽器、印象的に響くウィンドチャイム、切ない調べを歌い上げる中塚。どれもが見事に融合し、珠玉の名曲がしっとりと会場を包みこんでいく。
“音の実験室”は、美しい余韻を残して幕を閉じた。

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TAKESHI  LABライヴは、この先も続けていきたいと宣言する中塚。
いったいどんな実験で私たちを驚かせてくれるのか、期待は高まるばかりだ。

そして次回、12月6日に吉祥寺で開催される「オールリクエストライヴ」も必見!誰にも予測のつかない嬉しいサプライズ、楽しいハプニングは起こるのか?! さらなる高みを目指す中塚武の音楽への追及、その夜が今から待ち遠しい。

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text by 青野ゆう
photos by 菊池陽一郎、田中亜紀子


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【ライヴレポート】ワンマンライヴ ’15/10/16@渋谷 JZ Brat

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恒例となった渋谷セルリアンタワー2F『JZ Brat SOUND OF TOKYO』でのワンマンライヴ。その4回目が10月16日の金曜日、冷たい霧雨の降るなか開催された。

毎回ライヴを楽しみにするオーディエンスはもちろん、初ライヴの期待に胸膨らませ訪れる人も多い。金曜の夜もあってか、開演前から誰もがビールで喉を潤し、おしゃべりに興じリラックスした様子。テンポのいいBGMが流れる店内は、早くも賑やかな雰囲気へと包まれていく。

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何と言ってもオーディエンスのワクワク感を盛り上げてくれるのが1発目の演奏だ。
ややルーズに白シャツと黒タイを着こなす中塚を筆頭に、今回はホーンセクションの五十嵐誠(トロンボーン)、佐久間勲(トランペット)、副田整歩(サックス)も一緒にステージに立ってのスタートという、なんとも贅沢な演出に、客席からは大歓声が沸く。

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もちろんお馴染みのメンバーである鈴木郁(ドラムス)、寺尾陽介(ウッドベース)、石垣健太郎(ギター)、石川周之介(サックス)も続けて登場。
すかさず1stステージ冒頭から「Countdown to the End of Time」という超強力チューンでスタート。鳴り響くダイナミックなホーンの嵐に、会場の熱気は一気に上昇。今宵も絶好調な幕開けだ。

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前回のライヴから2ヶ月“弱”ゆえの、新曲づくりにまつわる苦労話を交え、中塚が挨拶。ちょっとした笑いを誘う絶妙なトークは、ギュッと観客との距離感を縮めてくれる。こうしたトークこそワンマライヴの魅力といえる。

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2曲目はアルバム『GIRLS & BOYS』に収録の「Calling Your Name」。軽快に弾むドラムに、オーディエンスは早くも身体を揺らし、発せられる興奮と熱気がみなぎるなか、『LYRICS』からの「涙に濡れた夢のかけら」とオリジナルナンバーが続く。
華やかに、かつドラマティックなサックスの響きが会場中を魅了し、ライヴの恍惚感をいっそう煽る。

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ひと呼吸入れつつここでMC。スタートから共にステージに立ったホーンセクションの3人の紹介も、もはや笑い無しには進行できないちょっとした名物だ。
中塚とメンバーの掛け合いトークのおかげで、彼らの素顔がちらりとのぞく。見れば満面の笑みが、方々の客席から沸き起こっている。

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『LYRICS』に収められている「月を見上げてた」は、学生時代、20代特有の夢と現実の狭間にいる悶々とした思いを凝縮して生み出した、青春時代の代名詞的な1曲。

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しっとりと聴かせたあとには、屈指の超絶技巧が炸裂する「〇の∞」、そしてオーディエンスの手拍子も加わり、「Make Her Mine」では全員が熱いリズムと音の洪水にどっぷりと浸り、1stステージのクライマックスを迎えた。

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前半とは思えぬ盛り上がりをみせ、その熱気溢れる余韻が漂う会場。メンバーが去った後も、抜群の選曲に誰もが脱帽するDJ高橋マサルの見事な選曲がブレイクタイムのひとときを彩る。
ふと周囲を見渡すと、赤とオレンジの2層が美しいカクテルを注文する女性たちの姿が目につく。どうやらそれは、今日のキーアイテムのよう。

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しばしの休憩をはさみ、2ndステージでは黒シャツに白タイと装いを一新したレギュラーメンバーの鈴木、寺尾、石垣、石川らが中塚とともに登場。

ドラムパッドとルーパーを巧みに操り、『TAKESHI LAB』で無料配信されたナンバー「律動(リズム)」からのスタート。クールに刻まれる痛快なリズムが、早くも聴衆を釘づけにしていく。

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ここで改めて4人のメンバー紹介。息の合ったメンバーとの絶妙なやり取りで、次々と面白ネタを無邪気に披露する中塚。ゆるいトークとアグレッシブな演奏とが適度に拮抗するメリハリのあるスタイルもまた、中塚ワールドらしさのひとつであり、ニクいほどの魅力になっている。

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ルーパーを駆使した「冷たい情熱』」、スリリングにそして華麗なサックスが冴える「Johnny Murphy」と演奏はさらに続く。
「On and On」ではドラムパッドのパンチの効いたリズムループに、オーディエンスのボルテージも加速を増すばかり。

この後、1stステージに登場したホーンセクションの3人が再登場。継ぎ目なく続く「The Sweetest Time」のウッドベースとホーンの熱くて濃い絡みには、誰もが心酔した。

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そしていよいよ、お待ちかね『新曲三題噺』コーナー!

今回選ばれたのは「生きる!」「荒涼」そして、なんと、まさかの「ぱんだ」。まったくかけ離れたこの3単語から誕生した、本邦初披露となる新曲のタイトルは「からまるゆるめる」。
いったいどう味つけされたのか演奏前から興味をそそる。

同時に、そのネーミングから作られたJZ Bratバーテンダー砂田崇氏によるスペシャルカクテルも紹介。まさに休憩時に見かけたあの美しい2層カクテルだ。
マスカットリキュールに、赤ワイン、ジンジャーエール、グレープフルーツジュースが織りなす爽やかでフレッシュな味は、飲んだ直後から口いっぱいに広がる。

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新曲には想像以上に切なる中塚の思いが託されていた。

競争の激しい現代社会、つい生き急いでしまう我々に、まるで一石を投じるかのようなメッセージを秘めた1曲。
観客は息をのみ、ひたすら聴き入っている。
珠玉のサウンドは、恒例のおみやCDとしても最後に配られた。今回のジャケットももちろん石垣画伯のイラストだ。

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オーディエンスの心の奥深くを震わせながらも、「トキノキセキ」では軽々とポップな世界へとシフトする、このダイナミックな急展開も最高に盛り上がれる瞬間だ。
「すばらしき世界」では力みなぎるツイストで会場を圧倒。
これ以上ないほどに鳴り響く手拍子のなかで2ndステージはクライマックスを迎えた。

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熱烈な拍手のなかで再び登場した中塚はさっぱりとしたTシャツ姿に。
終わりゆくステージに、中塚は名残惜しさを隠しきれないのか、オリジナルグッズのタオルやコンパクトミラーの紹介を楽しげにしてみせる。

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そこにデザインされた名曲「Your Voice」をラストに選んだ中塚。テンポよくスイングのリズムで歌い上げ、まさに説明不要の絶品サウンドが隅々まで浸透、場内を魅了していく。

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いい音楽ってホントにいい! 
会場がひとつに繋がった輝かしい時間は、鳴りやまぬ手拍子のなかで終わりを告げた。

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12月6日には、いよいよあの【オールリクエストライヴ】第2弾が、吉祥寺QUATTRO LABOにて開催決定。
オーディエンスからのリクエストを募り、なんと本番当日にクジで引きながら曲目を決めるという前代未聞のライヴ。
大反響の前回を受けて、今回もリクエスト曲をどう調理して楽しませてくれるのか。たまらなく待ち遠しい。

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text by 青野ゆう
photos by 菊池陽一郎、田中亜紀子

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