Column

【のたり松太郎】

好きなマンガがあると何周も何周も読んでしまう僕ですが、この「のたり松太郎」もそう。

作者はちばてつや。「あしたのジョー」「あした天気になあれ」を描いた方ですね。もちろんこの2作品も読破しましたが、「のたり松太郎」はもう別格の面白さ。



とにかく主人公の坂口松太郎がとんでもない。

乱暴者で自分勝手で怪力の持ち主。

よく人を殺さないで済んでる、と言うようなエピソード連発です。もちろんマンガだからこそなのですが、それにしてもよくもここまで乱暴な男を描けるものだと感心してしまいます。


「気が荒くて力持ち」って・・・人間として一番近寄りたくないタイプ。

僕なんてたぶん2秒で絞め殺されちゃいます。



また、タイトルに「のたり」とついているだけあって、とにかく怠け者。

マンガで怠け者を描くとこんなにもダラダラと冗長になるのか、というようなページの無駄遣いっぷり。

何ページ進んでもこの男は稽古すらせず、1話分まるまる呑気に釣りなどしているのです。30巻目に至っては、1巻まるまるサボって競馬にうつつを抜かしたりするし。

ここまで来ると、主人公がサボってるんだか作者がサボってるんだか分かりません。


そのうえ、ときどき突発的に、相撲とはまったく関係ないストーリーで松太郎が大暴れしたりするので、とにかく読み手を混乱させるマンガであることは確かです。



でもね、セリフにもコマにも描いてはいないのですが、最後まで読んで分かったことがありました。

それは、彼が全36巻中ほんの数回だけ見せた頑張りが、すべて他人のためだったということ。

一度読んだだけでは分からないほど、あまりにもさりげない描写なのです。

そういうさりげない漫画、僕は大好きなのですよ。

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【電子書籍】

小説以外の本ならば、何となく週に2〜3冊くらいのペースで読んでます。
寝る前とか、仕事サボってる時とかに。

僕のばあい自宅で仕事をすることが多いので、通勤時間というのがほとんど無いんですね。毎週木曜のSuonoDolceに行く時か、スタジオでレコーディングをする時くらい。
だから仕事の合間などに本を読むには、寝るかサボるかしないといけないのです。そういう事情もあって仕方なく仕事をサボることにしてるんですよね。



本というのはこれまた年齢とともにどんどん増えていくもので。溢れかえる本棚を見るたびに自分がどれほど齢を重ねたかを思い知らされるようで、精神衛生上にも何とかならないものかと考えていたのですよ。
そこに降って湧いた昨年からの電子書籍ブーム到来。
僕も現在100冊/月のペースで本棚の本を片っ端からPDF化して、本棚のアンチエイジングを図っています。
おかげで最近はリアル本棚がスッキリ。



本も音楽も最近は完全にデータ化されるのが主流ですね。これからもその傾向はドンドン強まるのでしょう。
確かに「読む」とか「聴く」だけが目的のものであれば、僕もそれで全然OKだと思ってる派なのですが、
「触れる」
とか
「愛でる」
ってことになると話は別なのです。

そこには、懐かしさとか、幼児体験とか、肌触りとか、自分の生きてきた記憶の証が伴うのですよね。これは人それぞれの感情に根ざしているから、データではどうすることも出来ないのですね。



これから先の時代になって、脳波すらコントロールできるようになって、触覚や嗅覚さえも疑似体験できる時代が来るようになるとは思いますが、
「自分自身が生きてきた証」
としての記憶や肌触りはずっと大事にしたいんですよね。



ちなみに、絶対に電子書籍化できない、僕の記憶の主たちw

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速読法

ども。中塚武です。

飽きっぽい僕は、本を1冊読むのもひと苦労。
だから2〜3冊同時に読んでます。
飽きたら別の本に・・と交互に読めばスルッと読めちゃうんだよね。
しかも割と早い時間で。意外な速読法っすね。

今読んでるのはこの2冊。


統合失調気味なチョイスですが、そこはそれとして。
でも有吉のが面白すぎて30分くらいで終わっちゃったんだけどね。

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ふしぎトーボくん


僕は小さい頃から、マンガ家ちばあきお先生が大好きでねぇ。
ちばてつや、ちばあきお、七三太朗。
香港のMr. BOO四兄弟に勝るとも劣らない、日本の誇るマンガ家三兄弟の一人です。
彼は「キャプテン」「プレイボール」と野球マンガが有名なのですが、彼のマンガの真骨頂は野球部分ではなく人間味あふれる丁寧なタッチ。スクリーントーンもあまり使わないところも、ちば兄弟のいいところ。
その中でもぜひ読んで欲しい作品のひとつがこの「ふしぎトーボくん」。
すべての動物と話せる少年と近所の飼い犬たちの友情のお話。

子供の頃って、ちょっとした個性も「他と違うから」という理由で矯正されてしまうけど、実はそれって大人になってからの方が激しいよね。
普段は「個性は大切」と言っている小頭の良い人物にかぎって、他人の個性に出会うと過剰反応するからコワイ。

昭和的な映画を観て即席ノスタルジーに浸るくらいなら、ちばあきお先生の作品を読んで失くしかけたこころを取り戻したいっすね。

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ぴったりはまるの本 / 佐藤雅彦+ユーフラテス



根っからのゲーマー気質である僕は、遊びやゲームのルールを考えるのが大好きで、小学校の時には毎月のように新しい遊びを考えてはクラスメートと試し遊びしてみるという、ヒマな時間が有り余っている小学生ならではの生活スタイルを貫いていたものです。職員室では「中塚は遊びの天才だ」とまで噂されていたのですが、いい大人になってもその気質を引きずる今となっては、遊びすぎて「天災」に成り下がっています。
そんな気質を持つ僕にとって、よく取材等でライバルや憧れの人を挙げろと言われても誰一人としてミュージシャンを思いつかないんですね、音楽家のくせに。それよりも、別の肩書きを持ちつつ面白いゲームを作った人物に憧れと羨望を抱いてしまうのです。Psy-sの松浦雅也氏(「パラッパラッパー」作者)や糸井重里氏(「MOTHER」シリーズ作者)などには憧れや羨望などではなく、憎たらしくてワラ人形を作りたいくらいであります。
そんな僕の「五寸釘リスト」には「I.Q.」というゲームを作った佐藤雅彦氏も当然入っております。古くは超売れっ子CMプランナーとして、最近では「ピタゴラスイッチ」の企画者としてもおなじみの、日本を代表する「遊びクリエイター」のひとり。「I.Q.」に至っては「夢の中でルールを思いついた」なーんて天才肌なコメントを言ってのけており、天災肌の僕としてはそれだけで悔しいのですが、このゲームがまた面白くてイヤんなっちゃう。
彼の書く本も変わっていて、企業CMポスターを勝手に考えて作った「勝手に広告」や、世界一長い本「Fが通過します」など、まさにアイデア一発勝負の本が多くてどれも最高。
その中でも可愛くて笑えるのが「ぴったりはまるの本」。家にある日用品の輪郭だけが延々と描かれていて、そこに何かがピッタリはまる、という本。「よくこんなアイデア一発が本になるなあ」と、そのくだらなさに呆れつつもニヤケてしまう。
くだらなくて、笑えて、ポップ。うわぁ、僕の音楽そのままやんけ。

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面接の達人


この前ぶらりと本屋に行ったら、就職関係の本がまあ並んでる並んでる。そう言えば僕の就職の時もすでに就職氷河期と言われていたから、今の人達も大変だろうなあ。
僕の場合を振り返ると、「パックマン命」が昂じて、小学/中学時代のなりたかった職業が「ゲームクリエイター」。ここまで単純明快だと産んでくれた親にも申し訳ない気持ちになりますが、まあ「電車の車両になりたい」という幼稚園の頃の夢よりもまだ人間らしくて救われます。
高校・大学くらいになるとゲームからも遠ざかり、「モテたい」なんていう色気に脳が支配されて、いかにもモテそうな音楽の道にのめり込む(実は意外とそうでもなかった)訳ですが、そんなこんなでダラダラと大学生活を送り、いざ就職活動となると周りの同級生も自分を見つめ直し始めたりなんかするんですよ。「じゃあ僕も」なんて流されつつ、たまたま手に取ったこの「面接の達人」とか読んで一人で焦ったりして。そりゃもう熟読しましたねー。赤ペンで○とかつけまくって。この本が無ければ僕はどこも受からなかったんじゃないかな。そう言えばこの本に書いてある内容って、就職だけじゃなくて普段の仕事の時も有効なんだよね。今読んでも結構楽しい。
よく「好きなことを仕事にしたい」と望む人が多いけれど、僕が思うに、職業選びは「好きな自分でいられるかどうか」で決めた方が良い気がします。朝起きた瞬間から「好きな自分」でいられるなんて、24時間キモチイイよね。

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The Giving Tree(大きな木)


「book」と銘打っているくせにマンガのコラムばかり書いて「お前のbookはcomicだけか?」と、僕の知性のほどを勘違いされてしまうので、この辺でそろそろ絵本を紹介します。マンガでも僕にはまだ知的レベルが高すぎて。
この「大きな木」を知ったのは結構遅くて、大学を卒業したての頃でした。初めて一人で読んだ時うかつにも号泣してしまい、もし人前だったら危うく「大人になっても絵本とかで泣いてるキモいフェミニン男」というレッテルを貼られるところでした。
誰でもいつの時代でもそうなのかも知れないけれど、人間同士がお互いを思い合うって本当に難しいですね。その相手のことを考えていたはずなのに、いつの間にか自分のことに置き換えて考えている自分に気づいて「ああやっぱり自分って自己中なのかな?」なんて自問自答してみたりのどうどう巡りです。そういう思いの中でこの本を読み返すたびに「愛すること」は「待つこと」なのかも知れないと、自分の中の焦りが少しだけ消える気がします。
人のことを思うにはまず「他人のことを考えられるだけの自分なんだ」と自分に自信を持てるかどうかが大切かなと。自分の生きる道をしっかり見据えられるだけの自分がいるからこそ、人を許せて、人を待てるのかも知れないですね。
ちなみに僕の場合は、他人が待ち合わせに10分遅刻しただけで待てずに先に行ってしまいます。このままでは「愛が足りず、人を許せず、絵本で泣いてるキモいフェミニン男」になってしまうので反省します。

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マカロニほうれん荘


ほんの時々、7〜8年に1度くらいの割合で「奇跡的なリズム感を持ったギャグマンガ」が登場している、と皆さんは思ったことがありませんか?僕的には「コージ苑」→「稲中卓球部」→「えの素」→「ブッチュくん」・・・僕の頭の構造が想像できるラインナップで多少恥ずかしさを覚えますが、、、え?その前にそれらのマンガを知らない?まあいいじゃない。僕が年齢的に「お兄さん」だってことで(汗)。とにかくリズム感と「イッちゃった」感が高いギャグマンガは大好きみたいです。これらのギャグマンガを僕は「トライバルギャグマンガ」と呼んでます(嘘)。
では「コージ苑」のひとつ手前は・・・?それはもう当然「マカロニほうれん荘」でしょう。僕が幼稚園の時に連載していたことをうっすらと覚えているくらいでしたが、その後単行本を全巻買ってくまなく読み倒しました。
圧倒的なリズム感とスピード感、個性的なキャラ(特にきんどーさんが最高)、勢いと狂気で笑いを引き出すパワー。そして、寺沢武一とタメ張るほどアメリカナイズされた絵の上手さ。当時の洋楽(主にロック)や香港映画のカットを大胆に構図に取り入れたり、とにかく抜群のセンスで読み手を異空間に引きずり込みます。
僕はかなりこのマンガに影響受けたなあ。そこら辺のミュージシャンなんかよりよっぽど音楽的。僕の音楽聴きながら読むとリズムがピッタリだと思いますよ。それくらい影響受けてるからね。僕の音楽のルーツは?って訊かれたら「マカロニほうれん荘です」って答えたいくらい。でもそんな答え方したら「この人頭おかしい」と思われるので止めてます。
そう言えば最近は圧倒的リズム感のギャグマンガが無いですね。ペース的にはそろそろ強烈なモノが出てきそうな気がしますが。出てこなかったら僕が書きましょうか?自分が主役で。

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美味しんぼ


僕はマンガの趣味が他人とまったく合わないことで世界的に有名なのですが、それはひとえに「長編ものを読むとすぐに寝てしまい、起きるとストーリーを忘れている」という性格上の問題によるものなんです。だから僕がスンナリ最後まで読めたストーリーは、よほど面白いか、またはよほどの馬鹿でも分かるくらい単純かのどちらかです。
という事情もあって、僕が好きになるマンガには「1話読み切り」という条件がつきますが、それに加えて「料理マンガならなおのこと良い」という、マンガ家が聞いたら「お前に読ませるマンガなど無い!」と恫喝されそうな二次審査まであるんですよ。まあ、恫喝されるまでもなくそんな条件を満たしたマンガは本当に少ないので、あまり読めるマンガがないのですがね。
そんな「マンガ難民」の僕にとって、針の穴のような上記2条件を奇跡的に備え、オアシスのように光り輝くのが「美味しんぼ」です。2度ほど全巻揃えました。結局のところ置き場に困って2度ともブックオフに売っちゃいましたが。たぶんまた何かのキッカケで全巻揃えたくなるんだろうなあ。
何が好きって、そりゃあ決まってるでしょう。あの似たもの親子同士の超絶の味覚ですよ。どっちも料理をひとなめしただけで材料から産地から全て当ててしまうという超能力っぷり。ここまで来るとほぼエスパー漫画ですね。読んでて爽快ですらあります。

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