Column

眠らない男

朝・昼・夜・夜中・朝方、いつ電話しても中塚武はだいたい起きていて、「おいっす〜」と元気に電話口に出ます。毎日を音楽にいそしむ疲れ知らずのワーカホリック男・中塚武は、いったいいつ寝ているのでしょうか。
どうやら彼は、一日の中で小刻みに睡眠を取っているらしいのです。
渡り鳥は飛びながらでも眠り、マグロも泳ぎながら眠り、サバンナの動物たちも決して長い睡眠は取らないといいます。周囲の敵や獲物の動きを決して逃さないよう、常に神経を鋭敏にとがらせているとそういう眠り方になるんだそうです。人間でも、危険と隣り合わせの生活を送る者達、たとえば軍人は行軍しながら眠り、タケシが敬愛する『ゴルゴ13』も一日の睡眠を5分で済ませるという特技を持っています。
ということは彼はまさに野生生物やゴルゴと同じ眠り方、どんだけデンジャラスな生活をしているというのでしょう。あるいは、地下鉄を地下に入れることを考えすぎて眠れなくなってしまった往年の漫才師のように、アホなことを考えてて眠れないのでしょうか。
何度か彼の寝姿を目撃したことがあるのですが、彼はなぜかずっと「うつぶせ」で寝ています。短い眠りの原因は、もしかして単にこのうつぶせという姿勢のせいで深く眠れないだけなのかもしれません。
いや待てよ?
うつぶせの寝姿を目撃した海外ライブ遠征の時などは、彼は観光の時間を削っても人よりたっぷり眠っていることが多い。ということは小刻みではあっても、割とたっぷり寝ているのかな?こちらが知らないだけで、「おいっす〜」と元気に電話口に出た以外の23時間は、ずーっと寝ていることだって考えられます。
寝る子は育つ、と言いますが、彼は最近なぜか身長が伸びたそうです。
考えれば考えるほど夜も眠れません。

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洗心 純米大吟醸


日本酒と聞くと「酔っぱらいのオッサンが放つ異臭と同じニオイのするマズい液体」とイメージする人が結構たくさんいますよね。僕も何年か前まではそういう一人だったのですが、湯布院で飲んだ大分の名もない地酒を飲んだ時にそのイメージが吹っ飛びました。香りの高い湧き水のような、何とも言えないフルーティな香りがするものなんだなあ、とね。
幼い頃、母親が面倒がってケチャップをうどんにまぶし「大好きなスパゲティよ」と与えても喜んでツルツル食べていたという輝かしい経歴を持つ僕の舌でさえ即座に判断できるほど、日本酒には天地の差がありますよ。
何が違うのかなあ、と調べてみたら何と驚愕の事実が。本来お米だけで作るはずの日本酒は、生産量を増やすために米ぬかとアルコールで薄めてるんだそうですよ奥様。そりゃ全然違うに決まってる。子供の頃にシャンパンだと思ってやっぱり喜んで飲んでた「シャンメリー」と一緒じゃん。今やお米だけで作った日本酒の方が特殊なので「純米」と書かれて区別されています。
今でいう発泡酒とビールの関係と似たような感じかも。ビールの場合は日本が本場ではないだけに本物のビールが完全駆逐される心配はないけれど、日本酒の場合、日本で本来の作り方を止めたらそれで絶滅ですね。
そんな中で細々と作られている「湧き水のような日本酒」の中でも、もう本当に「水の宝石」という趣なのが新潟の地酒「洗心」。これ以外にも純米大吟で美味しいお酒はたくさんあるけれど「甘露」って言葉はこのお酒が一番似合う、というほどに品位のある香りと喉ごし。
こういうお酒を飲むと、フランスはワインやシャンパンを、ドイツはビールを、UKはスコッチウィスキーを、国が誇りを持って法律で守っていることを日本人として少し羨ましく思えてくるなあ。

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ケータイ


外国の携帯電話を見る度に「日本の携帯電話は他のどこの国とも違う独特の進化を遂げているなあ」と痛感させられますねえ。海外の携帯は「インターネット接続!」とか「通信速度アップ!」とか、まさに「ケータイ=通信ツール=インターネット」というストレートな考え方のもとに進化してる訳です。いっぽう日本はと言えば、「カメラ何万画素!」とか「着メロ何百曲!」とか、さらには「環境着信音!」と、咳払いとかドアの閉まる音を着信音にしたりしてたりと、まさに「ケータイ=遊びツール=おもちゃ」というオメデタイ考え方のもとに進化してる訳ですね。
誰かの咳払いを聞いて「あ、電話だ」と思わせようとするその感覚たるや、動物なのにお腹の袋で子供を育てるカンガルーを初めて見た時に「どうやったらそう進化するの?」と思った小さい頃の純粋な疑問さえ呼び起こします。これはもうオーストラリアの動物のような独特の進化ですよ。
ちなみに、ケータイのデコレーションやストラップにここまでこだわるのも日本人だけですね。「このケータイ新製品で超小さくて軽いよ!」と言いながらケータイより重いストラップをどっさり付けてるギャルを街中で見かけた時には「日本人って本当にカワイイ」と心から思いました。
そんな日本独自のケータイ文化に触れようと先日FOMAなるケータイに買い換え、初めて写メやドラクエなぞで遊んでみたりしました。何十万画素の解像度を持ちながら、本来の電話機能では横浜駅のど真ん中で堂々と「圏外」になっちゃってるそのFOMA君が、袋の中の子供カンガルーに見えて可愛くて仕方がありません。可愛いがりすぎたのか買って2週間で壊してしまったので、今はmovaに戻しました。
僕に一番合ってるケータイはツーカーの簡単ケータイかも。すっかり進化から取り残されてしまってるシーラカンスのようです。

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巷のブーム

最近「日本のオタク文化が世界を席巻している」とか言うニュースをよく見るようになりましたねぇ。「アキバ系」なんて言葉まで生まれて、日本のデザイナーが書いたそれっぽいイラストがヴィトンのバッグにまでプリントされたりして。TVの深夜番組とかつけっ放しにしてると、メイドの格好したお姉さんがずいぶん甲高い声で「モエ〜」とか叫んだりしていて、まるでジャイアンの歌みたい。あ、ジャイアンは「ボエ〜」か。
で、こういう過剰なブームが起きると決まって、なぜかみんな「オタク文化大賛成」みたいな空気になるのが日本人の可愛いところ。そんなこと大して気にしてなかったはずなのに「実はオレもオタクなところがあってさあ」なんて言い始めたりしてね。「何のオタク?」と訊くと「グルメオタク」って、そりゃ単なる食い過ぎだって。こりゃもう1億総オタク化現象ですね。
あと最近もう一つよく思うのが、ちょっとした体調不良も最近は何だかもっともらしい病名がついてるなあ、と。「ナントカ症候群」とか「ナントカ障害」とかね。ツッコミ入れたくなる病名も結構あったりして。この前知り合いが「海外旅行から帰ったら睡眠障害になっちゃってさあ」と言っていたので「安心しなよ。それは時差ボケだから」と教えてあげたら、なぜだかすごくムッとしてました。
僕も最近はガリガリ君の食べ過ぎで虫歯になってるから、「エナメル質障害のスウィーツオタク」です。

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Snatch / Guy Ritchie


生きていく上で僕が大切にしていることの1つに「リズム・テンポ」っていうのがありまして。日本語だと「間」っていうんですかね。もう間の悪いヤツとか、間の抜けたヤツとか、ホント大っ嫌いなんですよ。「衣・食・間・住」って呼ぶくらい、ものすごく重要視してるんです。
それがまた性格にも表れていて、ホントせっかちなんですね。この前自宅に「TVチャンピオン 全国慌てん坊選手権」の出場依頼ハガキが来たくらいですから。しかも自分では自覚がないので、知らない間に周りの人々を急がせたり焦らせたりして、多大な迷惑をかけているらしいんです。
「音楽やってるからリズムを重視してる」とかそういうカッコイイ理由ではなくて単にグズグズしてるヤツが嫌いなんですね。そんな僕を人々は「少し躁の気があるのではないか」と心配してくれていますが、それを言われるたびに、躁病のことを「みさお病」と読んでいた恥ずかしい過去を思い出すので心配ご無用です。
何の話だっけ?あ、映画か。そう、この「Snatch」の監督ガイ・リッチーは、そのテンポ感がすごく僕と似てるんですよ。飛行機での移動シーンなんて一瞬で、まるで地球が1つの街にスッポリ収まっている気にさえなってしまう。金、名誉、人間関係、そして人命さえもが全てバカバカしく感じられるスピード感。忙しいことを「悪」と捉えがちな最近の風潮を笑い飛ばす痛快さが最高。

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