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【ライヴレポート】プレミアムワンマンライヴ@銀座「月のはなれ」



2004年6月にソロデビューアルバム『JOY』をリリースしてから、丸10年。その間に数々のイベント主催や、ビッグバンド(中塚武withイガバンBB)での活動など、幅広く活躍してきた中塚武。ソロデビュー11年目に突入したいま、

「初心に帰って、1年目の気持ちで、またここから始めたい。」

そんな思いから、今月から毎月1回『プレミアムワンマンライヴ』を敢行することになった。

「自分のいまの音楽だけをやるライヴにしたい」と、選ばれた空間は、“カフェ”という、30人も入れば満員となる小規模なスペース。観客1人1人の顔が見え、プレイヤーの息づかいさえも感じられる空間で、11年目の活動をスタートさせた。

第1回の会場は銀座。与謝野晶子もひいきにしていた老舗の画材店が母体の「月光荘サロン 月のはなれ」。天気がよければオープンエアで星が見えるという隠れ家のようなカフェは、プレミアムワンマンライヴのオープニングにふさわしい場所だった。



ライヴの脇を固めるのは、石垣健太郎(ギター)と石川周之介(サックス)のおなじみのメンバーによるトリオ編成。
小雨が降り、蒸し暑い梅雨の夜。幕開けは、ギター1本と歌のループエフェクターで始まる「冷たい情熱」。立て続けに「白い砂のテーマ」へと流れ、会場に心地よい清涼感をもたらしていく。

ベストアルバム『Swinger Song Writer』からは、オリジナルではゴリゴリのエレクトロであった「On and On」をトリオバージョンで披露。ループエフェクターを使ってその場で生声を録音し、何層にもハーモニーを重ねていくという中塚らしい職人技も見せるなど、遊び心たっぷりの演出に観客もぐいぐいと引き込まれていった。

2011年にスタートした、書き下ろしの新曲を無料配信する「TAKESHI LAB」から配信された曲「ふれる」を歌う直前のMCでは、その歌詞に触れて、インターネット社会の恩恵を受けている反面、瞬時に情報が広がっていくスピード感に怖さも感じていると話す中塚。
「肌と肌のふれあいというか、顔を合わせて、同じ空間で同じ空気を吸って。そういうことの大切さを忘れちゃいそうになる。だから今日、皆さんとこんなに近くにいられるこの場所で、すごく歌いたかった曲」とコメント。
温かいギターとやわらかなサックスの音色、そして歌詞に耳を澄ませながら、いまここで、同じ時間を共有していることの幸せを、観客も噛み締めていたのではないだろうか。



15分間の休憩をはさんで、後半戦は、KUWATABANDカバー「スキップビート」から始まりラストの「トキノキセキ」まで怒濤の勢いで、会場のボルテージも最高潮に。全10曲のライヴ終了後も歓声と手拍子が鳴り止まず、予定されていなかったアンコールへと突入していく。

中塚は毎回、ライヴのアンコール曲を事前に用意しないため、この日も観客からの「アグレッシヴな曲を!」とのリクエストに応えるかたちで『Big Band Back Beat』からギル・スコット・ヘロン「It’s Your World」を披露。
ビッグバンド用に高速スウィングアレンジされたはずの曲を、今回はなんとトリオのみで演奏。息のぴったり合った3人による圧巻のパフォーマンスに、会場も大盛り上がりのうちに幕を閉じた。

(text:川崎圭子)

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