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【ライヴレポート】ワンマンライヴ ’15/8/25@渋谷 JZ Brat

8/25ワンマン01
例年より、秋の訪れの早さを感じさせるような冷たい風が吹き抜ける8月の最終週。
3回目となる中塚武のワンマンライヴが渋谷・セルリアンタワー2Fにある『JZ Brat SOUND OF TOKYO』で開催された。

8/25ワンマン02
訪れた人が思わず吸い込まれる、そんな心地のよいライティングに照らされたフロア。
聞こえてくるBGMが、これから始まるライヴへの期待感を後押ししてくれる。
ワクワクするワケはもうひとつ、入口で渡された鮮やかな緑の卵型シェイカーの存在。
理由が気になるものの、あえて深く追及しないほうが、楽しみが何倍にも膨らみそうだ。

8/25ワンマン03
訪れた観客たちは、この贅沢な空間に身をゆだね、美味しいお酒を味わい、楽しいおしゃべりに興じている。
スタートを心待ちにする観客の笑顔で会場が埋め尽くされた頃、抑え込んでいた感情が一気に溢れ出るかのごとく『On and On』からの1stステージがスタートした。
冒頭からドラムパッドによる人力ループに合わせたドラムソロ!そのクールな音像と跳ねまくるリズムに思わず誰もが腰を揺らす。2ヶ月ぶりの中塚ワールド幕開けの瞬間だ。

8/25ワンマン04
黒シャツに白タイという装いでビターに決めた最強メンバー5人。鈴木郁(ドラムス)、寺尾陽介(ベース)、石垣健太郎(ギター)、石川周之介(サックス)に続いて、中塚が軽やかにステージへあがる。
黒ずくめのメンバー全員の足元は鮮やかなオレンジのスニーカー。すでに起こり始めている痛快なステージの盛り上がりを予言しているかのよう。
1曲目からの勢いに、早くもオーディエンスは興奮気味。そして間髪入れず『Coutdown to the end of time』が。鳴り響くサックスと弾けるグルーブ感、観客を一気に圧倒していく。

8/25ワンマン05
猛烈に格好よすぎる演奏から一転、親しみをこめた中塚流の季節の挨拶。
気になるシェイカーに触れつつも、使うタイミングは明かさず笑顔で濁すあたりが、中塚らしくもある。
ここで束の間のクールダウン。配信限定アルバム「53512010」に収録されている『詐欺師のブルース』を披露。スぺイシーな音に包まれながら、横揺れのグルーヴが聴衆を魅了する。

8/25ワンマン06
演奏後はメンバー紹介。様々な小話が中塚の口から飛び出してくる。ステージに立つメンバーひとりひとりの素を感じられるのは、ファンにとっては最高に贅沢。
オーディエンスとの距離感がまたさらにぐっと縮まる、そんな人情味溢れる曲間のトークは、今やワンマンライヴの名物ともいえる。

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4曲目は夏を惜しむかのような『白い砂のテーマ』。ライヴ冒頭から心拍数高めで身体も暑くなったぶん、心地いいリズムと甘美なサックスで、ほどよくリラックス。
そして1stステージ後半は、2ndアルバム「Laughin’」収録の『Melody Fair』。
優しい歌声で雰囲気たっぷりに聞かせ、そのままラストの『虹を見たかい』へ。
待ってました!とばかりにオーディエンスも即座に手拍子で応え、スウィングのリズムに広い会場は再び熱気を帯びる。繰り返す高揚感が沸点に達したまま1stステージが終わる。

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ここでしばしの休憩タイム。その間、間髪入れずに抜群の選曲で会場内の雰囲気に彩りを添えてくれるDJの高橋マサル。このワンマンライヴには欠かすことのできない一人だ。

8/25ワンマン09
いよいよ後半の2stステージでは、観客も期待に胸を踊らせ待ちわびていたホーン隊の3人が登場。
アグレッシブに、そしてパワフルに、この舞台に厚みをもたせてくれる彼らの演奏が鮮やかな華をそえる。

8/25ワンマン10
前半とは打って変わり、白シャツに黒タイで清々しくメンバー全員が登場。
そして中塚はそのままピアノに向かい、2007年に手がけた中塚自身初めてのドラマ音楽『SEXY VOICE AND ROBO』メインテーマから後半戦がスタートする。

イガバンBB率いる五十嵐誠(トロンボーン)、茅野嘉亮(トランペット)、村瀬和広(サックス)の放つブラス・セクションが強烈にカッコよく突き抜けていく。

8/25ワンマン11
MCでは、電車遅延ニュースを耳にした中塚が会場にいるお客さんのことを心配してみたり、のど飴を口に入れたまま、うっかりステージ立っていたことを素直に告白したり、優しい笑いを誘うトークに会場の雰囲気も和んでいく。もちろん、ホーン隊3人の紹介でも爆笑の渦となったことは言うまでもない。
『冷たい情熱』に続けてクラブクラシック、ギル・スコットヘロンの『It’s Your World』を超絶アレンジで心を奪う。

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恒例のオリジナルグッズアイテムの紹介コーナーでは「CUT &MASH」のロゴ入りTシャツが登場。かつて自身の楽曲をマッシュアップしたノンストップミックスの缶バッチ音楽型プレイヤーを懐かしんで制作された1枚だ。イラストロゴは言わずもがな石垣画伯。いつでも期待を裏切らない、チームワークの賜物だ。

8/25ワンマン13
後半戦も中盤になった頃、前回のワンマンライヴからスタートした新コーナー『新曲三題噺』で紹介されたスペシャルソング『初夏のメロディ』を再び披露。どこか切なくも柔らかに響く歌声とスローなテンポは、初めて聞く者にも心地いい。

そしていよいよ、今回の新曲披露のコーナーへ。
2回めとなる今回の『新曲三題噺』に託された3つの言葉は「蝉時雨」「深海」「超絶」…そこから生まれたのが『ひとしずく』。
美しいタイトルは、この日のために用意されたJZ Bratのスペシャルカクテルの名前にもなっている。白ワインベースにブルキュラソー、ピーチやすみれのリキュールをシェイクした、爽やかで、すっきりした優しい口当たりだ。
いったいこの曲には中塚のどんな思いが込められているのか。

8/25ワンマン14
3つのキーワードから完成した『ひとしずく』には、ひとの一生が重ねられていた。
たった一滴の湧水が、山から川へと流れ、いずれは大きな海へ。そしてその海に流れ出ても、生まれたときのその一滴の存在は変わらず、最初の“ひとしずく”であることに変わりはない…それは、人生も然り。
そんな思いを大切にしたいという中塚の気持ちが凝縮された珠玉の一曲。
切なく歌い上げる中塚の声が、深く深く心に染み込んでいく。
おみやCDとして観客全員にプレゼントされた『ひとしずく』。秋の気配を感じる夜にこそ、改めてひとり静かにCDを聴き返してみたい。

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そこから一気に空気を塗り替えるように、炸裂するドラムから『すばらしき世界』へと続く。オーディエンスも一緒に声を出してと呼びかける中塚。
速い8ビートのテンポ、疾走感溢れるサウンドに客席からの熱い手拍子も加わる。
石川のサックスが圧巻の高音域を放ち、観客の心をわしづかみ。
クライマックスに向けて一気に華やかさを増し、熱狂の渦を駆け抜け本編は終了した。

8/25ワンマン16
鳴りやまぬ手拍子に迎えられアンコールに応えるメンバーたち。
中塚も「CUT &MASH」のTシャツに着替えて登場。
会場となるJZ Brat、会場の雰囲気を裏から支えてくれたDJ高橋マサル、そしてメンバーの労のねぎらった後に『Your Voice』を披露。
その余韻に浸る間もないまま、ついに夏だ!祭りだ!サンバだ!と、思わず叫びたくなるブラジリアンリズムが!!

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恐るべし、あの名曲のフレーズが! さだまさし『北の国から』のサンババージョンが〆とは鳥肌モノだ。
オーディエンスも我を忘れ、夢中になってシェイカーを振っている。ブラジル色のシェイカーがこの瞬間、ステージと客席をひとつにつなげていく素晴らしさ、この曲の世代を越えた普遍性に思わず感嘆。
観客の生き生きとした表情のすべてが、このライヴの素晴らしい成功を物語り、これ以上はないという盛り上がりをみせ、幕を閉じた。

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次回のワンマンライヴは街が秋色に染まり始める10月16日金曜日。場所は同じく渋谷JZ  Bratだ。
毎回、最強で最高なライヴを披露してくれる中塚武の次なる挑戦は?
どんな曲が飛び出し、楽しませてくれるのか、今から待ち遠しくて仕方がない。

8/25ワンマン20
text by 青野ゆう
photos by 菊池陽一郎、田中亜紀子

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