「いま」を生きる同世代の日本人が抱く等身大の歌詞世界を極上のポップスへと昇華した「Lyrics」から3年ぶり、通算7作目のオリジナル・アルバムが完成しました。多彩な音楽を自在に横断し、研ぎ澄まされた感覚が掴みとった斬新なリズム、先鋭的かつリッチな存在感のある音、新しい感覚をまとった日本のポップ・ミュージック。エレクトロニカやヒップホップなど様々なジャンルのサウンドを吸収し、世界同時進行で新たな可能性を模索し続けている最先端のジャズシーンにも通じるアグレッシヴでスリリングな新しい音のカタチ。幾何学模様のような縦横無尽に躍動する音の海の中を、日本語の響きのユニークさを生かした呪文のような言葉が降りそそぐリードトラック「JAPANESE BOY」ほか、電子音と生楽器との賑やかなアンサンブルは、その難解さを感じさせず、ひとつひとつの音色の瑞々しい響きが聴くたびに驚きを感じさせ、独自の世界観を極めたサウンドスケープは中塚武の真骨頂ともいえる音世界です。

今作も作詞、作曲、編曲、管弦オーケストラアレンジ、プログラミング、演奏(ピアノ)、歌唱、コーラスに至るまで、全てを本人自らが担当し、ゲストミュージシャンには、パーカッションに松岡“matzz”高廣(tres-men/quasimode)、ストリングスにNAOTO、ブラスセクションには、本田雅人(sax)、佐々木史郎(trumpet)、エリック・ミヤシロ(trumpet)、Luis Valle(trumpet)、中川英二郎(trombone)、五十嵐誠(trombone)他、現在の日本のジャズ界の実力派ミュージシャン達が参加し、華を添えています。ミックスは栄田全晃氏(CRICKET STUDIO)、マスタリングは前田康二氏(Bernie Grundman MASTERING)が担当、アートディレクターとして杉江宏憲氏(CRYPTOMERIA)を迎え、より深い作家性の成熟を見せた作品となりました。

Eye

2016.3.16 Release

価格:2,800円+税
品番:UVCA-3035
レーベル:ポリスター

01. JAPANESE BOY

アルバム制作が決まってからも、わりと長い期間、このアルバムの軸になる楽曲を作りあぐねていました。

コンセプト的には、カオスで、ナンセンスで、新しくて、しかもカッコイイ曲。思いつきを言うのは簡単なんですけれども、作るのは結構しんどい。

いざ作ると決めてからは、自分に身についてるスキルや経験をあまり大切にせず、バランスを大切にせず、ルールを守ろうという意識も大切にせず、荒削りな気分のままで、半日ほどで曲を書きました。
今回のアルバムは「直感と初期衝動」を大切にしたかったので、最初に下りてきた楽想はできるかぎりそのままに。

歌詞もナンセンスで。
一聴すると何を歌っているか分からない、意味のないような歌詞にしました。
色々とナンセンスなアイデアは浮かんだのですが、日本語のルーツともいえる祝詞をメロディに乗せてみると、驚くほどしっくりきました。

歌の録音では、共同プロデューサーの石垣健太郎から、さも意味のあるかのように感情を大きく込めて歌えとのディレクションが。
その効果はてきめんで、「意味が分からないのに何だか説得力がある」という、まるでタガログ語でラヴソングを歌っているかような仕上がりになりました。

素晴らしいミュージシャンの方々による管弦の演奏も最高のテイク。演奏トラックのデュレイションをざくざくと切っていくことで、生演奏の楽曲にもかかわらずエレクトロニック音楽のような肌触りに。

小賢しさを排除してナンセンスを求めた結果、最高の楽曲が誕生しました。

02. プリズム

この楽曲も、テーマは「初期衝動を大切にする」こと。
まずはトランペット&テナーサックス2管のセクステット曲として、土台部分を成立させました。

安定感抜群のバンドメンバーによる最高の演奏によって、すでにこの段階でリリースできるほどの完成度になりましたが、この曲のもう一つの要である電子音を散りばめる作業が。
生演奏のグルーヴをしっかり残しつつも、丁寧に電子音を配置していく。緻密さと荒削りの二律背反を絶妙に両立させる作業。
一瞬たりとも気を抜くことのできない、根気のいるアレンジでした。

歌は、まず曲のテンポを20ほど落としてから録音スタート。すべての歌録音が終わってからタイムストレッチでテンポを元に戻しました。
こうすることで、母音や子音などの1音節1音節に、あり得ない密度で情報量を入れ込むことができました。

僕が心から絶大な信頼を寄せるバンドメンバー。石垣健太郎、石川周之介、鈴木郁、寺尾陽介の4氏。
今回のアルバムはこの4人だからこそ完成したアルバムで、その意味では「僕のソロアルバム」というよりも「5人のバンドのアルバム」と思っています。

03. 律動(リズム)

この楽曲の趣意は、リズムの違う3つのモチーフを異なる楽器群で交互に演奏すること。
楽曲そのものの拍は4/4+3/4の7拍子なのですが、各モチーフのアクセントを異にすることで、複合拍子の曲に聞こえさせています。

元々はウェブサイト上の無料配信用として作った楽曲でしたが、今回アルバムに収録するにあたり、すべての生楽器と歌をふたたび録音し直しました。
以前は打ち込みだったドラムやベースのリズムセクションもバンドメンバーによる生演奏に差し替えましたが、普段からライヴで演奏している曲でもあるので、難解さを感じさせないほどの強靱なグルーヴが生まれました。

04. あの日、あのとき

誰にでも、振りかえればあれが自分の転機だった、あれがきっかけで自分は変わった、と思えるできごとや瞬間があると思います。
昔を懐かしむだけでなく、もしかしたら今この瞬間さえも、10年後には「あの時があったから自分がある」と思うのかもしれません。
そう思うと、いつの瞬間も、明日の自分につながる大切な一瞬。
そんな思いを曲にしたためました。

サビのメロディモチーフは、作曲当初は少し違うラインでしたが、歌詞をあてながら少しずつラインを変えただけで、思いもよらない味わいが出てきました。
さらに、途中のある1音を半音下げただけで、見違えるほどに楽曲が生まれ変わりました。
最初のモチーフを丁寧に仕上げることで、メロディはまったく違うものに変貌していくのだと、あらためてディテールの大切さを痛感しました。

05. 初夏のメロディ

2015年は、渋谷のJZ Bratにてワンマンライヴシリーズを定期的に行っていましたが、その中で「新曲三題噺」というコーナーを試みていました。

予約されたお客さまからあらかじめキーワードを募り、事前のイベント会場などで3つのキーワードを抽選。その3キーワードをもとに新曲を作ってレコーディングし、当日のライヴでCDをプレゼントするとともに、その新曲の初演もしてしまおうというチャレンジングな企画。

思いついてはみたものの、実際にやってみるとこれが何とも大変な作業。
でも、その場にいらっしゃっていただいたお客さまと一緒に曲を作って演奏できる醍醐味とその一体感たるや、これまでに味わったことない最高の経験でした。

今回のアルバムには、この「新曲三題噺」コーナーで生まれた曲を3曲収録していますが、この「初夏のメロディ」もこのコーナーによって誕生した楽曲です。

キーワードは「初夏」「手と手」「前髪」の3つ。
抽選会の直後にドラムの鈴木郁さんが「"手と手"というところだけでリズムにしたら面白そう」というアイデアをくださったので、曲の途中でルーパーを使い、”手と手”を組み合わせた展開部分を作ってみました。

06. 〇の∞(album version)

NHK-Eテレ「サイエンスZERO」テーマ曲として作ったこの曲は、2014年にリリースした僕の10周年ベストアルバム『Swinger Song Writer』でも新曲として収録しましたが、今回は全面的に歌い直しつつ、コーラスアレンジも施してよりリッチな響きに仕上げました。

タイトル「◯の∞」は、左から右に、ゼロがまるで細胞分裂のように無限に増殖していくさまを表現しました。「ゼロの無限」と読むのですが、いまだに普通に読めた人がいません。

イガバンBB総帥、五十嵐誠くんによるホーンセクションは至極の一言。ソロは近藤和彦さんとエリック・ミヤシロさんが吹いてくださっています。
そしてストリングスはもちろん、みんな大好きNAOTOくん。他の曲でも最高の演奏をしてくださって、このアルバムを華やかな仕上がりにしてくださいました。

07. ふれる

もともとはウェブサイトの無料配信用に作った曲。これまでアルバムに収録するタイミングがなかなかありませんでしたが、サウンドの質感も歌詞の内容も今回のアルバム『EYE』のコンセプトにぴったり合っていたので、収録することにしました。

インターネット全盛の今は、少し検索をかけただけですべてを知ったつもりになってしまい、実際に体験して肌で感じることを忘れがちになってしまう。
そして、SNSでやりとりしただけなのに旧知の友人同士と勘違いしていまい、礼を失したやりとりに気づくデリカシーを忘れてしまう。
生身の人間同士が顔を合わせて泣き笑ったり、大きな自然に全身をゆだねたり、そういうことを忘れずにいたい気持ちで歌詞を書きました。

サウンドも歌詞の内容を踏まえながら、あえて無機質でフラットなアレンジにしました。

08. 苹果

大好きな宮沢賢治の中でも、やはり最高傑作のひとつ「銀河鉄道の夜」。
作品中に頻繁に登場する苹果(りんご)は生と死の象徴。
この楽曲はその象徴をモチーフに書いた曲です。

誰もにやがて訪れる死は生と一体で、ひとつの同じ流れにある。
人の命はもしかしたら、現世と来世を行き来しているだけで、現世の命が尽きた人は、また別のかたちで、どこかで生を授かっているのかもしれません。

バンドメンバーが現在の5人編成になった時、楽器同士の帯域の住み分けや、最低限の音でのアンサンブル強化だけで3ヶ月ほど費やしました。
そうして5人のアンサンブルが強靱になり始めてから最初に作ったのがこの楽曲です。
各パートの演奏が素晴らしく、曲の骨子でもある生命力を感じさせる録音になりました。

また、全編にわたって拍の頭を裏返すことで、メビウスの輪のような輪廻転生を表現しました。

09. parkour

パルクールとは、ビルや壁などの障害物を飛び越えたり登ったりするエクストリームスポーツの一種です。
とんでもない身体能力でビルの屋上などをジャンプしていく映像などを観たことがある方も多いと思います。

他の曲のホーンセクション録音にあたって、なんと、トランペット佐々木史郎さん、サックス本田雅人さん、トロンボーン中川英二郎さんという、ドリームチームのような方にお願いできることになり、急遽「このお三方にしかできない曲」を書き下ろしたのがこの楽曲です。
素晴らしい演奏家の方々のおかげで、まさに身体能力の限りを尽くした超絶技巧のオンパレードのような楽曲になりました。

ライヴでは、ジャムセッションのように毎回まったく違う表情になるような演奏になればと思っています。

久しぶりにシンセの音色を多用しながら、カラフルで華やかなトラックにアレンジ。
そして楽曲のラストでは、次曲のBPMに乗せながらさまざまな音が混沌を極め、やがてすべて空中に蒸発していきます。
蒸発した音はやがてまた、ひとつのしずくとなって地上に舞い降りるのです。

10. ひとしずく

この楽曲も、M5「初夏のメロディ」と同じく、ワンマンライヴでの「新曲三題噺」コーナーで生まれた1曲です。

抽選されたお題は「蝉時雨」「超絶」「深海」の3つ・・・難しすぎます。

蝉時雨なんて山や森のものだし、深海から一番遠いところ。
それに「超絶」……なんてアバウトな。

いや、待てよ。
高い山嶺にも低い海底にも存在するものがひとつだけある………水だ。

水が少しずつあつまって大きな河や海を作るように、人ひとりひとりの一生も、昔からの経験や喜怒哀楽が積み重なっている。
モノ作りも同じ。少しずつの積み重ねの果てに、信じられないような奇跡や、全世界を感動させるような作品を生み出す。
ひとつのしずくが源流からぽたりと落ち、それが川に流れて海に広がって、最後に海を深く削っていく。

苦心の末に、水の一生を人の一生になぞらえた曲が完成しました。

当初はリッチな管弦アレンジを全編に施していましたが、アルバムの流れと歌詞の内容を踏まえて、曲頭からミニマルなブレイクビーツと最小限コードが分かる程度のシンセベースだけに。
曲が進むにつれて少しずつ楽器群を増やすことで、一粒のしずくがやがて大きな河や海となっていく様子を表現しました。

11. ひねもすえそらごと

好きなことを続けていればだんだんと、もっと上手になりたいという向上心がそれなりに芽生えてきます。

その向上心と同時に、なかなか上達しない時期も重なったりすると、好きなことであるはずのことが少しずつ、何だかつらいものに感じ始めたりします。
登り調子になっている他の人たちを横目で見て、焦ったり沈んだり。

でも、やっぱり好きだからやめられない。
そこでやめられたらどんなにせいせいすることか。
好きなことを続けるということは、じつは苦行と裏腹だったりします。

そんなたまらない想いを歌にしてみたいなと思って、この曲を書きました。

終わりの無いような長いパッセージのメロディに、浮遊しているようなコード進行。
明るさの中にやるせなさを内包した楽曲に仕上がりました。

録音も終わり、曲がほぼ完成に近づいた段階でもまだ何だかぶよぶよとした感触があって、今ひとつ乗り切れなかったので、tres-menでも大活躍の松岡Matzz高廣さんにコンガを演奏してもらいました。
するとたちまち楽曲全体に一本スッと背骨が通って、ドラムとベースが持っていた本来の強靱なグルーヴをコンガがぐいっと引き出してくれました。
さすがマッツ、素晴らしいの一言。

曲のミックスも、コンガを中心にリズムセクションを組み立てて、本来録音していた管弦のパートは大幅にカットしました。
書き譜をバッサリとカットしていくことはとても、勇気というか未練のある作業(しかも演奏テイクが素晴らしいだけに)なのですが、今回はどの曲も、聴きごたえの気持ち良さだけを最優先にしたので、まさに清水の舞台から飛び降りる気持ちで、トラックを絞り込んでいきました。

12. からまるゆるめる

この曲が完成した瞬間、アルバムの最後を飾るのはこの曲しかないと思っていました。

この曲もワンマンライヴ「新曲三題噺」コーナーから生まれた楽曲で、お題は「生きる!」「荒涼」「ぱんだ」の3つでした。・・・これまた難題。
抽選会で「生きる!」と「荒涼」が選ばれた時は、"冬の日本海"的な渋い曲にしようかと思っていたのですが、3つ目に「ぱんだ」が引かれてから、まったくのノープラン状態に。
そりゃまあ、ぱんだは可愛くて好きだけれど………歌詞にするのはとても難しい。

そう言えば、ぱんだって「頑張って生きぬくぞ!」っていう感じがまったくしませんよね。
笹を食べるようになったのも、たまたま竹藪に住んでたからだというし。
でも、そんな風にすんなりと環境を受け容れてしまうって、すごくいいなあ、と。

いまの人間社会では、他人を蹴落としてでも成功や出世を成しとげた人を無条件に尊敬する風潮が強いように思えます。
成功や出世にとらわれて力みすぎ、いつも心が張りつめて、仕事も人間関係もがんじがらめに絡まっている場面のなんと多いことか。
もっと、ぱんだのように環境をするりと受け容れて、心をゆるめることが必要だと、自戒の意味も込めた曲に仕上げました。

考え方、見方しだいで、現実の解釈も大きく変わる。
生きるってことは、厳しいだけじゃなくて、楽しくも嬉しくもある。
死ぬほどつらいことも沢山あるけれど、それでも今は生きている。本当はそれだけで奇跡的に幸せなこと。

アルバム『EYE』は、そんなふうな、生きる幸せに思いを馳せたこの歌で幕を閉じます。

中塚武NEWアルバム
Eye」Release Party

~目玉の飛び出す夜~

2016年4月21日(木)

OPEN 18:00 / START 19:30
会場:代官山UNIT http://www.unit-tokyo.com
   〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-34-17 Za HOUSE[Google map
後援:J-WAVE

中塚武3年ぶりのオリジナルアルバム「EYE」のリリースパーティが、4月21日(木)代官山 UNITにて開催決定!
Delica LABでも大人気のフードユニットたちが一同に集結したフード・コートや、アルバム「EYE」オリジナルグッズも限定販売☆
さらに、ご来場者全員にアルバム未収録の書き下ろし新曲CDをプレゼント♪
みなさまのお越しをお待ちしております!
※フード&グッズ、その他リリースパーティ情報につきましては、中塚武HPまたはTwitterFacebookにて随時お知らせいたします。

出演
中塚武

Performance
Shumusic Saxophone Quartet

DJ
高橋マサル(Swing Design)
Tetsuya.Nz(Charlie-Hz)
勝矢和紙(渡る世間は音ばかり)
wallflower(Floor Extra)

VJ
杉江 宏憲
佐藤こずえ

Stylist
森下紀子

Goods Designer
倉田ゆりえ
TOSHIKO

Food
東京カリ~番長
“EAMO”MARO&SONS 
エムケバブ
コズミックキッチン
中西怪奇菓子工房。

Charge
前売り3,500円(+1D)、当日4,000円(+1D)

Ticket
チケットぴあ(Pコード:290-092)
ローソンチケット(Lコード:72503)
e+

Premium Ticket
先日リリースされたアナログ7インチ『JAPANESE BOY』(サイン入り)、ジャケ画ステッカー、2ショットチェキ付プレミアム・チケットが1枚4000円で好評発売中!
数に限りがございますのでお早めにどうぞ♪

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宛先:live@nakatsukatakeshi.com
件名:4/21「EYE」プレミアム・チケット購入
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