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【ライヴレポート】ワンマンライヴ ’15/6/14@渋谷 JZ Brat


渋谷駅から国道246号線を登ると左手にセルリアンタワーがそびえ立つ。
中塚武のホームグラウンドとも呼べる『JZ Brat SOUND OF TOKYO』はその2Fにある。
この会場でワンマンライヴが開催されるのは3月20日以来2回目だ。


会場に足を踏み入れると、間接照明の柔らかな光に包まれたフロアを、雰囲気のある音楽が包み込んでいる。
すでに中塚武の世界が会場内に満ちているのが感じられる。

DJに耳を傾けているといつの間にか客席は満席に。
みなそれぞれ思い思いの会話に花を咲かせながらも、これから始まるライヴに思いを馳せ、期待に胸を膨らませている。


18時をすぎ、いよいよメンバーが登場する。
全員が黒シャツ、黒ズボンに白タイと揃いの衣装を身にまとい、靴もオレンジに統一して一体感を醸し出している。
鈴木郁(ドラムス)、 寺尾陽介(ベース)、 石垣健太郎(ギター)、 石川周之介(サックス)に続いて中塚がステージに登場。
ステージ中央でマイクを握り、いよいよ1stステージのスタートだ。


最初のナンバーは「It’s Your World」。
中塚武withイガパンBBのアルバム『BIG BAND BACK BEAT』に収録されていたギル・スコット=ヘロンのカバー曲だ。

ビッグバンドで演奏されたアルバムバージョンとは異なり、コンボスタイルのアレンジだが、その迫力はビッグバンドに勝るとも劣らない。
曲後半ではサックスソロからスキャットがからみ合い、会場のボルテージも一気にマックスだ。

そしてMC。
スリリングな演奏とは打って変わり、気さくなトークで会場を和ませる。
拍手のもらい方だけで会場の笑いを誘うなど、中塚はあくまでも自然体だ。


続いて石垣のギターに導かれるように「愛のうた」が披露される。
鈴木、寺尾の強固な土台の上で石垣が淡々とリズムを刻み、石川が華を添える。
一糸乱れぬチームワークに支えられてスキャットを歌う中塚はこの上なく楽しそうだ。

その楽しさは会場の隅々にまで伝わり、客席でも笑顔の花が満開だ。
リズムに合わせて身体を揺らし、全身で音楽に浸っている。


続くナンバー「愛の光、孤独の影」から、間髪を入れずに「律動(リズム)」がスタートする。
この曲は中塚武が自身のサイトで2011年から行っているプロジェクト『TAKESHI LAB』で無料配信されたナンバー。
アルバム未収録だけに、多くのファンがステージでの演奏を期待していたようだ。

曲が終わるとメンバーが紹介されるが、付け加えられるエピソードが秀逸だ。
ひとことひとことで、各メンバーのキャラクターが頭に明確に浮かんでくる。


続いて演奏されたのは『Kiss&Ride』からのナンバー「The Sweetest Time」。そして1stステージのラストは『LYRICS』に収録されていた「虹を見たかい」。

オーディエンスの手拍子が会場を包み、盛り上がりの余韻を残したままメンバーはステージを後にする。

1stステージが終了すると再び、BGMが会場に流れ始める。
DJを担当していたのは中塚が絶大の信頼をおく高橋マサル。
ステージの後味をさらに増幅させる巧みな選曲はさすがで、どの曲も中塚がステージでカバーしても違和感がなさそうだ。


20分ほどのインターバルの後、再びメンバーがステージに登場する。
今度は白シャツに黒タイという出で立ち。中塚は帽子を被りながら、そのままグランドピアノの前へ。


2ndステージ最初のナンバーは「Countdown to the End of Time」だ。
そう言えばアルバム『Rock’n Roll Circus』でもこの曲が冒頭を飾っていたことに思い至る。
何事も始まった瞬間から終わりへのカウントダウンが始まるもの。
そういう意味ではこれほどオープニングに相応しい曲はほかにないのかもしれない。


2ndステージから加わった3人のメンバー、榎本裕介(トロンボーン)、茅野嘉亮(トランペット)、副田整歩(サックス)のソロも順にフィーチャーされ、引き締まったサウンドが2ndステージを待ちわびていた客席を魅了する。
やはり中塚サウンドにはタイトで華やかななホーンセクションが欠かせない。

曲が終わると早速ホーン・セクションのメンバーが紹介される。
ここでもまた各メンバーの微笑ましいエピソードが語られ、客席は笑いに包まれる。


そして曲はピアノのリズム・バッキングとダイナミックなホーンが印象的な「涙に濡れた夢のかけら」、 中塚お気に入りのナンバーのひとつ「スキップ・ビート」と続いていく。
「スキップ・ビート」は中塚武withイガパンBBのアルバム『BIG BAND BACK BEAT』にも収録されていたKUWATA BANDのカバー曲。
要所要所を締めるホーン・セクションのアクセントが心地よく、ビッグバンドを彷彿とさせるサウンドだ。


続くナンバーは『TAKESHI LAB』第2弾として配信された珠玉のバラード「ふれる」。
この曲もすでに配信が終了しており、ライヴで聴けるのを楽しみにしていたファンも多かったのではないだろうか。

そしていよいよお待ちかねの新曲「初夏のメロディ」。
前回のライヴで予告された新コーナー『新曲三題噺』による新曲だ。

リクエストコーナーに寄せられたキーワードから「初夏」「前髪」「手と手」の3つがテーマとしてピックアップされて作られた曲で、この日のおみやCDにも収録されている。
ピアノを離れステージ中央に戻った中塚はバーテンダーの渡辺知寛氏をステージに招き、曲に合わせてこの日のために用意されたスペシャル・カクテル『初夏のメロディ』をお披露目する。


すいかリキュールや、もものリキュール、白ワインなどから作られたカクテルはブルーと白の2層になっており、添えられた蘭の花が涼味を演出している。
仕事じゃなければぜひとも注文したかったのだが……残念!
『おみやCD』のジャケットにもレシピが掲載されているので、材料さえ手に入れば再現することが可能だ。

ちなみにおみやCDのジャケットは石垣健太郎の手によるもの。
ブルーをベースにしたデザインが爽やかで、描かれたイラストからは微笑ましいラブストーリーがイメージされる。


そしていよいよ曲の披露。
ホーンセクションとフルートによるイントロ、メジャーセブンスを基調としたサウンド、ふんわりと柔らかく歌うボーカルと、どこをとっても涼やかで軽快なナンバーだ。
曲後半ではルーパーによる「手と手と手と手と……」というコーラスがフィーチャーされ、これが実に印象的。
この日の入場者はみな帰りの電車の中でこのフレーズを反芻していたのではないだろうか。


ステージはいよいよ大詰めだ。
「Your Voice」「すばらしき世界」が立て続けに演奏され、ステージ本編は終了するが、もちろん大きな拍手は鳴り止まない。


アンコールに応え、グレーのシャツに着替えた中塚が再びステージに登場すると、拍手の音量もボリュームアップ。
「みんな知ってる曲です」の声に続いて「恋とマシンガン」のイントロが流れ始めると、会場のボルテージも最高潮に。

会場の手拍子に合わせて心地よさそうに歌う中塚も、この日一番の笑顔だったかもしれない。


この日のワンマンライヴは、バラエティに富んだ選曲やメリハリの効いた演奏、曲ごとに表情を変えるボーカルといったサウンド面と、温かみのある場の雰囲気、美味しいカクテル、そして洗練されたBGMなどが一体となって作り上げられた、まさに「中塚ワールド」だった。


名残惜しげに歌い終えた中塚の口からは、8月25日に次のワンマンライヴが決定したことが告げられた。もちろん場所はここJZ Bratだ。
そして次回『新曲と三題噺』キーワード抽選会が、7月14日恵比寿BATICAで行われることも併せて発表された。

夏の終わりにどんな新曲が披露され、どんなカクテルを味わえるのだろう?
再び訪れる『中塚ワールド』への小旅行が今から楽しみだ。


text by 大山哲司
photos by 松永佳子、田中亜紀子、高橋マサル

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